抄録
富士山南麓標高 960-1015 m の富士山国有林内で,風倒害をうけたヒノキ人工林を広葉樹林化するために最適な下刈り方法を検討した。年 2回下刈りを行った調査区は樹高成長が遅く,林冠がうっ閉していなかった。年 1回以下の下刈りを行った調査区は樹高成長が大きく 9年目に林冠がうっ閉した。刈り取り高が低い調査区では風散布型樹種が,刈り取り高が高い調査区は鳥散布型樹種の実生定着が多かった。無処理区は樹木の被圧によりススキが消失した場所への侵入が新たに見られた。下刈り頻度や刈り取り高の違いにより光環境や本数密度に違いが生じ,異なる樹種の実生が定着する結果となっており,異なる下刈り方法を組み合わせることで林分全体の種多様性が高くなることが示唆された。