抄録
ナラ類が優占する放棄された落葉広葉樹二次林を対象に年輪解析を行い,優占樹種の定着,および成長の過程から森林の成立過程を推定した。薪採取のための伐採施業が行われていた時期にリリース (成長量の急激な増加) が頻繁にみられ,伐採施業で残存した個体が急激に成長したと考えられた。コナラとヤマザクラでは林分が放棄され始めた頃に定着した個体が最も多く,その当時の明るい環境が定着を促進したことが示唆された。林分放棄後,遷移の進行により成長が抑制された個体の割合が増加したが,一方で不連続にリリースが生じており,遷移が進行する過程でも枯死倒木などの撹乱が生じていることが示唆された。