抄録
本研究は宮城県仙台市岡田新浜地区を対象にして,津波による高木の根返り跡に成立した湿地植生と微環境特性を調べた。調査は凹地を横断するように調査測線を設置し,植生と微地形,水質を調べた。結果,(1) ヒメハッカなど3種の絶滅危惧種を含む18種の湿地生草本が記録され,(2) 60 cmほどのわずかな比高差に沿って,植生が湿性から乾性へと変化する実態が検出できた。また,(3) 塩分濃度が高い低比高域には,シオクグなど塩性の湿地生草本が出現した。津波は様々なサイズ,比高および塩分濃度を有する凹地を生み出し,そうしたわずかな環境の違いに応じて,希少な湿地生草本を含む多様な植物種が生育し始めたと考えられた。