2018 年 44 巻 1 号 p. 51-56
大雪山山系と利尻・知床山系のエゾコザクラで報告されている異なる葉緑体DNA ハプロタイプの分布境界を明確にするため,両者の中間に位置する大雪山山系北部のニセイカウシュッペ山と北見山地の函岳に自生するエゾコザクラの葉緑体DNA trn L( UAA ) 3’ exon - trn F ( GAA ) 領域とatp B - rbc L 領域の塩基配列を決定した。その結果,ニセイカウシュッペ山のエゾコザクラの塩基配列は大雪山山系の塩基配列と一致し,函岳のエゾコザクラの塩基配列は利尻・知床山系の塩基配列と一致した。このことから,大雪山山系と函岳の間に葉緑体DNA ハプロタイプの分布境界が存在することが明らかになった。