2019 年 44 巻 3 号 p. 475-478
神奈川県では,主に丹沢山地にシカが生息している。丹沢山地におけるシカ問題は,戦後の乱獲による絶滅の危機,保護施策による個体数回復と造林地拡大による林業被害の発生,自然植生への影響の深刻化の3回の局面に整理されている。丹沢山地におけるシカによる森林被害は,低中標高域のスギ・ヒノキ人工林における造林木被害と高標高域の自然林での自然植生劣化があり,現在,シカ管理計画等による取り組みが進められている。自然植生劣化への対策が継続的に進められてきた場所では植生回復が見られるものの,丹沢山地全体での植生回復には至っていないため,取り組みの継続が必要である。また,水源林整備事業等が行われている人工林においても,森林整備後の林床植生へのシカの影響がみられており,近年シカが増加傾向にある箱根山地等を含めて,森林整備とシカ管理を連携した取り組みが必要となっている。