外来牧草は,安価で効果的な緑化資材である一方,シカによる食害やロードキルの誘発,そして在来植物との競合等の生態系被害を引き起こす可能性など,様々な問題を抱えてもいる。外来牧草に起因する諸問題,特に生態系被害の発生リスクを低減するためには,牧草に替えて地域性系統の緑化植物を用いることが望ましいが,コストや供給体制等の理由により,牧草を使わざるを得ないケースも多々ある。そのような場合は,様々な牧草種を対象に導入地からの逸出能力を定量的に評価し,より逸出しにくい種を選択的に用いることが有効と考えられる。本稿では,外来牧草の逸出能力の判断材料のひとつとして,複数の牧草種の風による種子散布距離を推定した研究を紹介した上で,種子散布から定着までの一連の逸出プロセスを考慮した総合的な逸出能力評価手法について考察する。