東日本大震災時に残存した防潮堤上のクロマツ林の状態及び成立要因を調査した。このクロマツ林は,1980年代初頭の旧防潮堤整備時に石詰め法枠工とテンキグサ苗の植栽が行われ,以降のクロマツ種子の自然散布による定着により成立したものであった。2020年時で95本のクロマツが生残し,樹高約7 mの疎林を形成していた。胸高直径は5~12.5 cmの個体が多く,いずれも割栗石の間の土壌に根を張るものであった。群落組成は2013年時と2020年時で大きくは変わっておらず,低木層でのドクウツギの優占に加え,林床には海浜生種や草原生種の生育が認められた。ただし,林床の明るい疎林が維持され,ヒメヤブランやハマアオスゲの被度が増加していた。テンキグサは,2013年時には林内には生育しなかったものの隣接する海浜部で群落が認められ,2020年時には林内にも生育していた。津波に対して海側の最前面の堤防上で残存した本クロマツ林は,「震災の伝承」という価値が認められるとともに,防潮堤における土木工学的そして生態的な調整解の好事例と考えられた。