2021 年 46 巻 4 号 p. 397-399
人との親和性の高い在来野草類カワラナデシコを対象に,埋土種子集団を形成する可能性の有無を検討した。2013年,2014年及び2020年に採取した種子を用いて,2021年1月に発芽試験を行った。いずれも冷蔵庫で乾燥・低温条件で保管した種子である。22日目の試験終了時の平均累積発芽率(n=8)は,2013年産種子が74.4%,2014年産種子が79.8%,2020年産種子が77.5%であり,有意差は認められなかった(ANOVA,P>0.05)。すなわち,乾燥・低温条件下で長期保管(6年3ヵ月~7年3ヵ月)した場合でも,前年秋季産の種子と同等の累積発芽率を示し,種子自体の寿命は比較的長いことが明らかにされた。一方,本種の生育地が乾いた立地であることを記している図鑑類が散見し,また海浜域の砂丘,浜堤,砂洲等の砂質土で乾いた立地での本種の大規模な生育地も各地で報告されている。本試験結果を鑑みると,乾性立地では水分条件が整わずに発芽が抑制されることによって,永続的埋土種子集団を形成することが強く示唆された。