日本緑化工学会誌
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46 巻, 4 号
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特集「緑地とグリーンインフラ―緑化工学からの新たな展開」
短報
  • 古澤 優佳, 中村 人史
    2021 年 46 巻 4 号 p. 392-396
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2021/07/13
    ジャーナル フリー

    近年,森林への侵入竹が増加し,主伐,再造林時の保育管理に与える影響が懸念されている。本試験は,モウソウチクが侵入したスギ林を皆伐し,その後4年間にわたり月1回の継続した刈払いを行った際に再生稈がどのように衰退するかを調査した。また,5年後の再生稈発生状況について,再造林における通常刈払いを行った場合と比較した。その結果,4年間の継続刈払いでは,新竹発生時期に太い稈が多数再生し月を追うごとに稈が細く発生本数も減少する,というサイクルを繰り返し,4年目に発生本数はごく少数となることが示された。また,発生する稈の種類は,大型稈,小型稈,ササ状稈の順に移行していくことが示唆された。造林保育における通常刈払いによる再生稈駆逐効果は継続刈払いより低く,より長い年月がかかることが明らかとなった。さらに,再造林時の作業道開設による地下茎の分断は再生稈抑制効果が高いことが示唆され,母竹林と再造林地を分断するように路網を開設することが望ましいと考えられた。

技術報告
  • 大澤 啓志, 鈴木 涼, 河原 菜月
    2021 年 46 巻 4 号 p. 397-399
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2021/07/13
    ジャーナル フリー

    人との親和性の高い在来野草類カワラナデシコを対象に,埋土種子集団を形成する可能性の有無を検討した。2013年,2014年及び2020年に採取した種子を用いて,2021年1月に発芽試験を行った。いずれも冷蔵庫で乾燥・低温条件で保管した種子である。22日目の試験終了時の平均累積発芽率(n=8)は,2013年産種子が74.4%,2014年産種子が79.8%,2020年産種子が77.5%であり,有意差は認められなかった(ANOVA,P>0.05)。すなわち,乾燥・低温条件下で長期保管(6年3ヵ月~7年3ヵ月)した場合でも,前年秋季産の種子と同等の累積発芽率を示し,種子自体の寿命は比較的長いことが明らかにされた。一方,本種の生育地が乾いた立地であることを記している図鑑類が散見し,また海浜域の砂丘,浜堤,砂洲等の砂質土で乾いた立地での本種の大規模な生育地も各地で報告されている。本試験結果を鑑みると,乾性立地では水分条件が整わずに発芽が抑制されることによって,永続的埋土種子集団を形成することが強く示唆された。

  • 田中 淳, 吉原 敬嗣, 亀井 廣吉
    2021 年 46 巻 4 号 p. 400-404
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2021/07/13
    ジャーナル フリー

    ノシバは,被食耐性が強く,種子は,シカに採食された後,糞として排出された後も発芽能力がある。この特徴をいかし,アメリカ産,中国産,日本産の3つの産地のノシバ種子を使用し,ニホンジカへの採食試験および発芽試験を行った。日本産の排出された種子の発芽率は採食前の発芽率73.0%から68.3%とほぼ変わらなかったが,アメリカ産は90.0%から59.7%へ中国産は88.0%から12.2%へ低下した。日本産ノシバは,糞への排出率・損傷率なども考慮すると採食種子の17.2%が発芽可能な種子として拡散される可能性がある。ノシバによる緑化を行うことで,種子を採食したニホンジカの移動と排糞により緑化地周辺へも種子が拡散し緑地を増やす可能性がある。

技術資料
  • 長田 美保, 岡 浩平
    2021 年 46 巻 4 号 p. 405-406
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2021/07/13
    ジャーナル フリー

    本研究は,塩生植物のハママツナ,ハマサジ,フクドを対象にして,変温および低温湿潤処理が3種の発芽に与える影響を明らかにすることを目的とした。培養条件は,20℃の定温,20℃と10℃の変温,変温前に14日間の低温湿潤処理を施した計3つとした。発芽実験の結果,低温湿潤処理の条件では,3種ともに平均発芽日数が有意に短くなり,最終発芽率も高かった。変温条件では,ハママツナとフクドの最終発芽率が有意に高くなった一方,ハママツナとハマサジの平均発芽日数が有意に長くなった。このことから,変温に関しては,発芽に与える影響は種によって異なると考えられた。

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