2024 年 41 巻 2 号 p. 134-137
人工肘関節置換術(TEA)の合併症として,上腕三頭筋機能不全は低い頻度で生じるが,生じた際は治療に難渋する.TEA 後の上腕三頭筋機能不全に対して,大腿筋膜を用いた再建術を施行した3 例の術後成績を報告する.症例は50 歳女性,66 歳女性,60 歳女性の3 例で,全例が関節リウマチによる肘関節症に対して,肘後方アプローチでのTEA が施行された.いずれも,術後早期に軽微なエネルギーが加わり,MMT1 の上腕三頭筋機能不全を呈したが,診断治療の遅れにより陳旧性へ至った.再建後,全症例が上腕三頭筋筋力MMT4 と改善し,上肢挙上時の不安定性は消失した.TEA 後の上腕三頭筋機能不全に対する再建には,Anconeus rotational flap やAchilles tendon allograft などが報告されているが,それらが使用困難な場合においても大腿筋膜は用いることが可能であり,有用な選択肢となり得る.