2024 年 41 巻 2 号 p. 138-142
五指手は,母指の欠損,同一平面上に位置する5 本の手指を特徴とする稀な先天異常である.母指球筋が完全に欠損し対立運動不能であるため,pinch やpower grip が困難であり,形態的にも好ましいとはいえない.母指化術が唯一の治療法であるが,再建母指の対立可動域制限のため,同じ母指化術を治療法とする母指形成不全と比較して成績不良とされてきた.その原因として,intrinsic muscle が弱いこと,再建したCM 関節が正常より背側に位置することが挙げられる.著者らは血縁関係にある五指手患者2 例4 手に対し,母指化術(Buck-Gramcko 法)に小指外転筋移行術(Huber-Littler 法)を併用することで,母指対立機能と母指球の膨らみの再建を行った.術後,母指対立機能は良好であり,患者満足度は高い.五指手はintrinsic muscle が弱く,再建したCM 関節の位置が正常より背側に位置する特徴を踏まえ,母指化術に小指外転筋移行術を併用し,対立方向への牽引を追加するのが望ましいと考える.