2024 年 41 巻 2 号 p. 20-25
母指CM 関節症に対し大菱形骨全切除を行ったsuture-button suspensionplasty(SBS)について,手術手技上の工夫を紹介し,術後2 年以上経過した症例の治療成績を分析した.対象は29 例30 手,Eaton 分類でstage 2; 1 手,stage 3; 18 手,stage 4; 11 手,術後経過観察期間は平均42.7 か月(24~72 か月)であった.手術では第2 中手骨の骨孔を,近位骨幹端-骨幹移行部の位置で1.2 mm Kirschner 鋼線を用い,尺側から橈側へ向けて斜めに作製し,2 ステップでの骨孔作製を行い,骨孔位置の一定化を図った.評価項目は,術前後の,労作時visual analogue scale(VAS),橈側・掌側外転可動域,Kapandji スコア,握力,指尖つまみ力,Hand20,大菱形骨腔の高さ/基節骨長(trapezial space ratio,以下TSR),第2 中手骨骨孔の位置(suspension point)とした.労作時VAS,橈側外転可動域,握力,Hand20 は有意な改善が得られた.TSR は30 手中10 手(33.3%)で術後の50%未満まで低下したが,母指列の短縮が術後愁訴となった例はなかった.本法は術後合併症が少なく,疼痛の改善が期待できる術式であった.