2024 年 41 巻 2 号 p. 16-19
月状骨脱臼はしばしば初診時に見逃され,陳旧例では整復が困難となり,治療に難渋することがある.著者らは,創外固定器を用いた二期的手術で治療した陳旧性月状骨脱臼の一例を経験したので報告する.症例は69 歳男性である.受傷後5 か月で月状骨脱臼の診断となった.手術は二期的に行われ,初回手術では創外固定器による牽引を4 週間行い,次に月状骨の観血的整復を行った.整復後,大きな不安定性はなく,鋼線固定や靱帯の修復及び再建は施行しなかった.創外固定器は,術後4 週間装着した.4 年後の最終観察時には,疼痛はなく経過は良好であった.今回の経験から,創外固定器による緩徐な牽引は観血的整復を容易にし,救済手術を回避できる可能性がある.