2024 年 41 巻 3 号 p. 221-226
手指の狭窄性屈筋腱腱鞘炎の長期罹患例では,PIP 関節の伸展制限を呈し治療に難渋することがある.PIP 関節伸展制限を伴う狭窄性屈筋腱腱鞘炎例に対して,直視下A1 靱帯性腱鞘切開に加えて,皮下A2 靱帯性腱鞘切開を行った29 指の術後成績について検討した.A2 靱帯性腱鞘の皮下切開を行うことで,全例で術直後にはPIP 関節の完全伸展が得られた.術後にVAS,PIP 関節伸展制限角度,患肢握力,DASH 機能障害/症状スコアは有意に改善した.ただし,術前に30°以上のPIP 関節伸展制限を認めた症例では,術直後の可動域を維持できなかった例があり,後療法が重要と考えられた.術後6 か月まで経過観察できた症例にbowstringing を呈した症例はなく,本術式はPIP 関節伸展制限を伴う狭窄性屈筋腱腱鞘炎に対する術式として有用であると考えられた.