2025 年 41 巻 4 号 p. 338-341
当院で2020 年からの3 年間に橈骨遠位端骨折に対して手術を施行した50 歳以上の女性113 例を対象とし,骨粗鬆症治療の現状と効果について後ろ向きに調査した.骨密度検査率は92.9%であり,骨粗鬆症と診断されたのは74.3%であった.骨粗鬆症治療の内訳は,BP 製剤が24 例,VitD3 製剤が4 例,ビタミンK 製剤が1 例,テリパラチドが23 例,デノスマブが2 例,ロモソズマブが7 例であり(治療あり群),25 例は治療が行われなかった(治療なし群).単純X-P の再検率は45.3%であり,両群共に最終調査時に骨癒合が得られた.Dual-energy X-ray absorptiometry(DEXA)の再検率は27.9%であり,最終調査時のYAM 値の変化量は治療なし群が±0.0%,治療あり群が+2.6%であった.二次骨折を生じたのは治療なし群が3 例,BP 製剤投与群が3 例であった.骨粗鬆症の治療を行うことにより,橈骨遠位端骨折の治癒過程を阻害することなく,術後の骨密度が増加することが示唆され,特にデノスマブ,テリパラチド,ロモソズマブは骨密度増加作用が顕著であった.