2025 年 41 巻 4 号 p. 335-337
尺骨神経は肘部で外部からの圧迫により容易に障害される.このような急性圧迫障害は保存治療が原則であるため,手術治療の適応となる絞扼性尺骨神経障害とは明確に区別されなくてはならない.しかし,現状で臨床像から両者を鑑別することは難しい.急性圧迫障害の特徴を把握する目的で,急性圧迫性肘部尺骨神経障害12 例の臨床像と症状回復経過を診療録から調査した.発症時の主症状は,ほとんどの例で手内在筋麻痺ではなく小指しびれであった.肘部神経所見の陽性率はTinel 様徴候90%,肘屈曲試験33%,神経腫大0%であった.症状経過として,脱力症状の改善は発症後平均3.8 か月から自覚されていたが,小指しびれの解消には平均で5.7 か月を要しており,約4 割の症例では3 か月時点でしびれの変化を自覚していなかった.問診で急性圧迫を疑うエピソードを取りこぼさないことは必須であるが,絞扼性と判断して手術を行う際には,限局する神経腫大の確認を忘れないようにしたい.