2025 年 41 巻 5 号 p. 496-500
外傷性母指CM 関節脱臼・不安定症は稀な疾患であり,適切な治療をしなければ痛みや不安定性が残存し得る.外傷性母指CM 関節脱臼9 例9 指と外傷性母指CM 関節不安定症5 例5 指を合わせた14 例14 指の治療成績を調査した.外傷性母指CM 関節脱臼は全例手術を行い,全例疼痛が消失した.手術方法は靱帯修復術5 例,靱帯形成術3 例,CM 関節形成術1 例であった.一方,外傷性母指CM 関節不安定症は全例保存療法を行い,全例に痛みが残存した.そのうちの3 例はのちに靱帯形成術を行い,痛みは消失した.画像的に脱臼が明らかな外傷性母指CM 関節脱臼だけでなく,脱臼は明らかでないが圧痛やストレスによる疼痛が誘発される外傷性母指CM 関節不安定症には,靱帯修復術あるいは靱帯形成術を行うのが望ましいと考えられた.脱臼のはっきりしない外傷性母指CM 関節不安定症は見逃されやすく,診断に注意が必要である.