2025 年 41 巻 6 号 p. 700-703
上肢再建の腱移植ドナーとして,一般的に長掌筋腱や足底筋腱が選択される.長趾伸筋腱(以下EDL 腱)は低い欠損率,腱の長さ,太さ,強い剛性から有力なドナー候補だが,足趾腱間の交通枝や伸筋支帯などの解剖的煩雑さから,採取が避けられてきた.近年,EDL 腱をドナーとして用いる新たな採取方法が報告され,著者らも上肢再建で長い移植腱を必要とする際,EDL 腱を用いてきた.本研究では,腱移植のドナーとしてのEDL 腱の有用性・安全性を検討した.対象は上肢再建の際,移植腱としてEDL 腱を採取した8 例10 肢であった.結果,欠損例はなく,1 例を除き20cm 以上の移植腱が採取できた.上伸筋支帯レベルで,EDL 腱が2,3 趾と3,4 趾へと分離し,供給している亜型を1 例認めた.1 例で一過性の足趾伸展不全の合併症を認めた.EDL 腱は他の移植腱より長さ,太さとも十分な移植腱が採取でき,特に長い移植腱が必要な症例で有用なドナーの選択肢の一つになりうる.