2025 年 42 巻 3 号 p. 217-221
手根管症候群(CTS)とばね指は高頻度に合併し,双方の腱滑膜には病理組織学的な類似性が見られることが報告されている.ばね指治療ではPIP 関節の屈曲拘縮が問題となることが多い.本研究の目的は,CTS と中指ばね指の合併例において術中に中指PIP 関節他動伸展角度を段階的に計測し,両疾患間の機能的な関連性の有無と,拘縮改善に寄与する手術操作を明らかにすることである.同時手術を施行した18 例18 指を対象とし,CTS 手術では腱滑膜切除,ばね指手術では腱周囲の剥離も行い,それぞれの操作前後で他動伸展角度を測定した.術前平均-7.8°であったPIP 関節伸展角度は,CTS 手術後に12.3°,ばね指手術後に15.1°の改善幅を示し(いずれもp<.01),全例で0°以上の伸展を得た.これらの結果から,CTS とばね指は屈筋腱と腱滑膜を介して機能的に関連し,PIP 関節の拘縮を伴うCTS 手術では屈筋支帯切離に加え,虫様筋付着部から浅指屈筋筋腹までの滑膜切除と腱剥離が有効である可能性が示された.