2026 年 42 巻 4 号 p. 510-513
胸郭出口症候群(TOS)は神経・血管の圧迫により多彩な症状を呈するが,診断に用いられる徒手検査には再現性や信頼性に課題がある.本研究では,各検査肢位が肋鎖間隙に与える構造的影響を,新鮮凍結屍体4 体8 肢(全例女性,63~97 歳)で定量的に評価した.肋鎖間隙に可塑性ポリエチレン樹脂を挿入し,各肢位を再現して硬化模型を作成し,最狭窄部の厚さを計測した.上肢下垂位を基準とし,頭部回旋を加えるAdson 様・Reverse-Adson 様,肩関節外転180°のWright 様,外転90°+肘屈曲90°のRoos 様肢位との差分を算出して比較した.Wright 様およびRoos 様肢位では有意な狭小化が認められたが,Adson 系では有意差はなかった.特にWright 様肢位は肋鎖間隙への影響が大きく,有用性が示唆された.一方,構造的変化と症状の一致は常に得られるとは限らず,画像診断や神経学的所見との統合的評価が今後も重要である.