2019 年 48 巻 2 号 p. 113-146
心理会計のもとでは,経済学の原理である金銭の代替可能性が完全には成立しておらず,同じ金銭的価値の財でも,消費者の使用目的や購買状況に応じて,異なる価値基準を有する.本研究では,心理的状況の変化を心的負荷と在庫金額という二つの潜在指標で捉えてモデル化し,消費者の内面的要因が来店間隔に与える影響を解明する.これにより,一見非合理的とも思える消費者の購買行動を,行動経済学の観点から理解する.本提案モデルでは,心理的状況を閾値変数とした閾値型モデルに消費者の異質性を階層ベイズの枠組みで取り込み,マルコフ連鎖モンテカルロ法で推定する.小売店舗のID付POSデータを用いて実証分析した結果,消費者の購買行動には心理的状況が影響し,来店間隔の生起メカニズムに差があることを示した.