日本統計学会誌
Online ISSN : 2189-1478
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48 巻, 2 号
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原著論文
  • 宮津 和弘, 佐藤 忠彦
    原稿種別: 研究論文
    2019 年48 巻2 号 p. 113-146
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/10/07
    ジャーナル フリー

    心理会計のもとでは,経済学の原理である金銭の代替可能性が完全には成立しておらず,同じ金銭的価値の財でも,消費者の使用目的や購買状況に応じて,異なる価値基準を有する.本研究では,心理的状況の変化を心的負荷と在庫金額という二つの潜在指標で捉えてモデル化し,消費者の内面的要因が来店間隔に与える影響を解明する.これにより,一見非合理的とも思える消費者の購買行動を,行動経済学の観点から理解する.本提案モデルでは,心理的状況を閾値変数とした閾値型モデルに消費者の異質性を階層ベイズの枠組みで取り込み,マルコフ連鎖モンテカルロ法で推定する.小売店舗のID付POSデータを用いて実証分析した結果,消費者の購買行動には心理的状況が影響し,来店間隔の生起メカニズムに差があることを示した.

  • 伊藤 伸介, 出島 敬久, 村田 磨理子
    原稿種別: 研究論文
    2019 年48 巻2 号 p. 147-175
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/10/07
    ジャーナル フリー

    本稿では,個々人の就業選択に,家計の保有不動産や金融資産がどのような影響を与えているのかを,世帯員の就業・非就業の属性とその所得の構成さらに世帯の貯蓄額等を捕捉している「全国消費実態調査」の個票データを利用して推定した.本分析によれば,金融資産の場合,リスク資産が世帯主の就業を有意に抑制することがわかった.本分析から一部の年次において貯蓄現在高における株式や債券といったリスク資産の比率が世帯主の就業・非就業に負の影響を与えるが,全体としては,その影響は限定的なものにとどまっていることが確認できた.また,世帯主の就業・非就業に実物資産が与える影響に関しては,就業を有意に抑制する結果が得られた.このことから,家計資産の蓄積が世帯主の非就業の選択を誘導しているという理論的可能性が考えられる.また,宅地単価についても,世帯主の就業に対して有意に負の効果があることが確認できた.

日本統計学会賞受賞者特別寄稿論文
  • 大森 裕浩
    原稿種別: 研究論文
    2019 年48 巻2 号 p. 177-198
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/10/07
    ジャーナル フリー

    本稿では,多変量の金融資産収益率のボラティリティ・モデリングのために,これまでの研究で提案されているいくつかの確率的ボラティリティ変動モデル・実現確率的ボラティリティ変動モデルを取り上げ, ベイジアン・アプローチを用いてマルコフ連鎖モンテカルロ法によるモデル・パラメータの効率的な推定方法について紹介する.

  • 狩野 裕
    原稿種別: 研究論文
    2019 年48 巻2 号 p. 199-214
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/10/07
    ジャーナル フリー

    欠測データ解析の基礎理論はRubin とLittle に負うところが大きい (e.g., Rubin (1976), Little and Rubin (1987, 2002)).しかし,彼らはYobs, Ymisといった便利ではあるが曖昧な記法を用いたため,多くの誤解を生んだ.また,重要な概念であるMARなどに関連する数学的性質が証明なしで述べられており理解が深まらないといった課題がある.本論文では,数学的に曖昧性のない記法を用いて,欠測データ解析における重要な概念を誤解なく表現するとともに,いくつかの鍵となる数学的性質に証明を与える.具体的には,最尤法の理解を深めること,MARと条件付き独立の関係,パラメータ分離の役割,補助変数法の有効性について議論する.

日本統計学会研究業績賞受賞者特別寄稿論文
  • 浅井 学
    原稿種別: 研究論文
    2019 年48 巻2 号 p. 215-238
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/10/07
    ジャーナル フリー

    Realized Stochastic Volatility (RSV)モデルは,金融資産のボラティリティ・モデルの推定において,収益率と実現ボラティリティの両方の情報を使うため,SVモデルに比べて効率的な推定を行うことができる.RSVモデルの推定には,ベイジアン・マルコフ連鎖モンテカルロ法やモンテカルロ尤度によるシミュレーション最尤法を用いる方法が主流であるが,本研究ではカルマン・フィルターによる疑似最尤法について検討する.特に,単純なRSVモデルについて,効率性の比較を試みる.またボラティリティのモデル化において重要な性質である,非対称性・長期記憶・裾の厚い分布という3点について,RSVモデルの拡張を紹介し,カルマン・フィルターによる推定方法を説明する.最後に,アメリカ・イギリス・日本の株価指数のデータについて,さまざまなRSVモデルを用いて実証分析を行った結果を報告する.

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