日本統計学会誌
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特集:大規模データの利活用におけるプライバシー保護
詳細な地域データにおける秘匿処理の適用可能性について
伊藤 伸介寺田 雅之
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2020 年 50 巻 1 号 p. 139-166

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抄録

公的統計の分野では,個体情報の安全性を確保した上で統計データに付与されるノイズを調整する方法として,主に情報工学の分野で展開されてきた「差分プライバシー(differential privacy)」の方法論の適用可能性が,海外の統計作成部局から注目されている.その理由として,とくに小地域レベルの統計の結果数値においては,複数の統計表の組み合わせによって,個体の特定化を行う「差分攻撃(differencing attack)」のリスクの存在が指摘される.本稿では,アメリカセンサス局が行った2010年人口センサスを用いた差分プライバシーの適用に関する実証研究について紹介する.つぎに,差分プライバシーの概念を整理した上で,わが国の平成22年国勢調査のメッシュ統計を用いて,差分プライバシーの方法論に基づくラプラスノイズが付与された統計表の安全性と有用性に関して実証研究を行う.それによって,わが国の国勢調査の小地域データにおいても,差分プライバシーの方法論が適用可能であることが確認されている.

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