2021 年 51 巻 1 号 p. 1-39
実現共分散を取り入れた多変量非対称確率的ボラティリティ変動モデルと,そのマルコフ連鎖モンテカルロ法を用いたベイズ推定法を提案する.東京証券取引所の時価総額・時価簿価比率に基づく株価指数の高頻度歩み値を用いて,高頻度マーケットファクター・サイズファクター・バリューファクターを疑似的に作成し,その日次収益率及び実現共分散を用いて分析を行う.提案した3つのファクターは,個別株の収益率を一定程度説明することを示す.提案したファクターは,ボラティリティ・相関が時間変化し,ファクターの変動に対しての次の日のボラティリティの非対称性があることがわかった.また実現共分散を導入した確率的ボラティリティ変動モデルのいくつかの定式化を将来の予測によって比較した.潜在ボラティリティの予測に対しては,一変量の先行研究と同様の代理変数・予測量の組合せが最もよくなることが確認された.また,ニュースインパクト曲線により3つのファクターのボラティリティの非対称性の性質も明らかになった.