金融機関が抱える信用ポートフォリオ全体のリスク管理では,各企業の信用状態の従属性について,正規接合関数で捉えることが一般的である.一方で,正規接合関数は漸近独立な接合関数であり,同時デフォルト確率が過小評価される懸念がある.本稿では,企業資産価値変動の極値での従属性の強さが信用リスクに与える影響について分析する.まず2変量極値に関する理論分析により,上下の資産変動に対する極値の従属性や非対称性と同時デフォルト確率の関係を整理する.そのうえで,1,000企業への与信を想定した信用ポートフォリオのリスク評価,CLOトランシェの価値評価を行う.これにより,極値の従属性や資産変動に対する非対称性の強さが,同時デフォルト確率の高まりを通じてリスク評価やトランシェ価値評価に及ぼす影響をシミュレーションにより分析する.
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