日本統計学会誌
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51 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著論文
  • 石原 庸博
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 51 巻 1 号 p. 1-39
    発行日: 2021/09/15
    公開日: 2021/09/15
    ジャーナル フリー

    実現共分散を取り入れた多変量非対称確率的ボラティリティ変動モデルと,そのマルコフ連鎖モンテカルロ法を用いたベイズ推定法を提案する.東京証券取引所の時価総額・時価簿価比率に基づく株価指数の高頻度歩み値を用いて,高頻度マーケットファクター・サイズファクター・バリューファクターを疑似的に作成し,その日次収益率及び実現共分散を用いて分析を行う.提案した3つのファクターは,個別株の収益率を一定程度説明することを示す.提案したファクターは,ボラティリティ・相関が時間変化し,ファクターの変動に対しての次の日のボラティリティの非対称性があることがわかった.また実現共分散を導入した確率的ボラティリティ変動モデルのいくつかの定式化を将来の予測によって比較した.潜在ボラティリティの予測に対しては,一変量の先行研究と同様の代理変数・予測量の組合せが最もよくなることが確認された.また,ニュースインパクト曲線により3つのファクターのボラティリティの非対称性の性質も明らかになった.

特集:極値と接合関数の理論と応用
  • 江村 剛志
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 51 巻 1 号 p. 41-73
    発行日: 2021/09/15
    公開日: 2021/09/15
    ジャーナル フリー

    本稿では,系列相関のある定常時系列データに対して,コピュラに基づくマルコフ連鎖モデルを当てはめるための統計的手法を総説する.本手法の応用例である統計的工程管理の手法を,正規分布のモデルで詳説する.時系列の話題に入る前に,本稿で必要とされる範囲でのコピュラとマルコフ連鎖の一般的定義を与え,コピュラの数理的性質を解説する.その後,系列相関を持つ定常時系列のモデルをコピュラでモデリングし,データから最尤法でパラメトリックモデルを当てはめるための各種統計手法を紹介する.最後にいくつかのデータの実例を通して,各種手法の利用局面を説明する.実例のデータ解析のためのRコードは付録に与える.

  • 清 智也
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 51 巻 1 号 p. 75-99
    発行日: 2021/09/15
    公開日: 2021/09/15
    ジャーナル フリー

    いくつかのモーメント制約が与えられたもとで独立分布に最も近いコピュラのことを最小情報コピュラという.最小情報コピュラはある意味で指数型分布族のコピュラ版と解釈することができ,数理的に興味深い対象である.本論文ではその定義と基本的性質について具体例を交えながら解説する.特にコピュラの離散近似を経て,情報幾何学や行列スケーリング,最適輸送理論との関連性を概観する.またパラメータ推定法についても議論する.

  • 塚原 英敦
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 51 巻 1 号 p. 101-121
    発行日: 2021/09/15
    公開日: 2021/09/15
    ジャーナル フリー

    本稿では,21世紀に入り急激に注目が集まった接合関数モデルに関して,その本質的要素を簡単におさらいし,その歴史的展開を短く振り返った後,ファイナンス,保険数理,生存解析・寿命データ分析における応用例の検討を通じて,接合関数モデリングの特徴・利点・欠点を明らかにする.特に,2007–9年の世界金融危機において,接合関数モデルがどのような役割を演じ,どのような批判を浴びたのかについては,詳細に吟味する.

  • 北野 利一
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 51 巻 1 号 p. 123-156
    発行日: 2021/09/15
    公開日: 2021/09/15
    ジャーナル フリー

    多変量極値の理論をポアソン過程における生起強度の視点から考察する.成分最大値の組(CM)が既往研究の主体であるものの,閾値超過の多変量極値(TEXMEX)については,多変量パレート分布が四半世紀前に導入された.しかしながら,応用の観点から多変量極値の特性を把握するには,まだなお,本質的な概念や視点が不足している.そこで,相互の関係を議論するとともに,CMだけでなく,TEXMEX にも単純分布を設け,それらの乱数を同時に生成する手法について示す.

  • 吉羽 要直
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 51 巻 1 号 p. 157-178
    発行日: 2021/09/15
    公開日: 2021/09/15
    ジャーナル フリー

    金融機関が抱える信用ポートフォリオ全体のリスク管理では,各企業の信用状態の従属性について,正規接合関数で捉えることが一般的である.一方で,正規接合関数は漸近独立な接合関数であり,同時デフォルト確率が過小評価される懸念がある.本稿では,企業資産価値変動の極値での従属性の強さが信用リスクに与える影響について分析する.まず2変量極値に関する理論分析により,上下の資産変動に対する極値の従属性や非対称性と同時デフォルト確率の関係を整理する.そのうえで,1,000企業への与信を想定した信用ポートフォリオのリスク評価,CLOトランシェの価値評価を行う.これにより,極値の従属性や資産変動に対する非対称性の強さが,同時デフォルト確率の高まりを通じてリスク評価やトランシェ価値評価に及ぼす影響をシミュレーションにより分析する.

日本統計学会小川研究奨励賞特別寄稿論文
  • 澤 正憲
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 51 巻 1 号 p. 179-211
    発行日: 2021/09/15
    公開日: 2021/09/15
    ジャーナル フリー

    実験計画法の分野において,モデルの関数形やその関数の積分値を推定するために,与えられた標本サイズのもとで最適な点配置を求める研究がなされてきた.特に超球体の表面あるいは内部で定義された関数の積分値の推定に関して回転可能計画 (rotatable design) を用いる研究領域がある.回転可能計画やその類似概念の研究は,統計的観点のみならず,数値解析学における求積公式 (quadrature) や組合せ論におけるユークリッドデザイン (Euclidean design) の研究領域において独自に展開されてきた.本稿では,回転可能計画,ユークリッドデザインの研究領域を探訪しながら,高次元の(矩形)求積公式の構成理論を概観する.また種々の実験計画法を求積公式の枠組みで再構築する意義として,応答曲面モデルが多項式である場合に,Box-Behnken計画,中心複合計画,Doehlert計画などの古典的な応答曲面計画で表現可能な近似多項式の最大次数の上界が得られることをみる.

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