2023 年 52 巻 2 号 p. 153-176
生存時間解析において,一つのイベント時間を扱う様々な研究と応用例がある.一方,複数のイベント時間を同時に扱うニーズは潜在的には高いものの,その適用はまだそれほど多いとはいえない.生存時間解析における複数のイベント時間を同時に扱う多次元化のためのアプローチとして有用なコピュラをとり上げる.とくに,主として生物統計分野での適用に焦点をあてて,背景にある主要な問題,コピュラを用いるための基礎知識やこれまでの発展の経緯を解説し,競合リスクや複合エンドポイントの取り扱いといった生存時間解析の多次元化に存在する諸問題を紹介する.そして,セミ競合リスクのもとでの従属打切りへの対応といったこの領域における問題解決のアプローチとしてのコピュラの有用性を議論し,その中で致命的でないイベント時間の生存関数の推定に関する新たな計算手法の提案も行う.二つのイベント時間を同時に扱う応用例として,Cox回帰分析の2変量版の適用や研究デザインへの応用を与える.