2023 年 52 巻 2 号 p. 269-293
マーケティングでは,生存時間解析を用いて消費者の購買タイミングを分析する購買間隔モデルが研究されている.本研究では,観測されない消費者異質性の動的変化を考慮した競合リスクモデルを提案し,複数チャネルにおける購買間隔モデルに応用する.具体的には,競合リスクモデルを用いて,ECサイトとリアル店舗における購買間隔モデルを構築する.さらに,購買間隔の競合リスクモデルにおいて,観測されない異質性の動的変化を状態空間モデルにより捉え,消費者異質性を階層ベイズモデルにより捉えるモデルを提案する.また,購買間隔に加えて購買金額も扱う同時モデルを構築する.提案モデルをECサイトとリアル店舗における購買行動をシングルソースで記録したデータに応用した結果,単一のチャネルのみを扱うモデルや動的変化を考慮しないモデルと比較して提案モデルは優れたパフォーマンスを示すことが明らかになった.加えて,チャネルによるマーケティング変数の効果の違いなども明らかになり,提案モデルの有用性が示された.