2025 年 55 巻 1 号 p. 25-63
Cox比例ハザードモデルにおいて部分尤度法を用いたCox回帰法は,ベースラインハザード関数の推定を考量せずとも,興味のある回帰係数のみに対する推定を実行することに成功した手法である.一方,回帰係数とベースラインハザード関数の両方の推定に興味がある場合,ワイブル回帰法のようなパラメトリック法,区分指数ハザード回帰法やスプラインハザード回帰法が有用である.本論文の目的は,これらの回帰法を解説し,その統計的性能を比較することである.特に,区分指数モデルの下でのポアソン回帰法と,スプラインハザードモデルの下での罰則付き最尤法を詳説し,医療データ解析の際の注意点等を解説する.様々な形状のベースラインハザード関数を母集団に想定した状況下でシミュレーションを行い,Cox回帰法(部分尤度法),ワイブル回帰法,ポアソン回帰法,スプライン回帰法の推定精度の数値比較を行う.最後に,実データの解析を通して,これら回帰法での解析結果を比較する.