2026 年 55 巻 2 号 p. 329-357
本稿は,古典的保険リスク理論に立脚し,破産確率および Gerber-Shiu 関数を核に古典から現代に至る発展の経緯を体系的に整理しながら,従来とは異なる視点からリスク過程の解釈に言及する.すなわち,サープラス過程をマクロ的に近似することにより,古典モデルからLévy 型リスク過程への発展の正当性と,確率過程の離散観測推定の重要性について指摘する.また,Lévy 型過程に対するスケール関数の役割を明示し,破産関連諸量を統一的に扱う解析構造を示すとともに,その離散観測に基づく独自の統計推測法を紹介する.さらに破産理論の考え方を死亡率モデリングに応用する新しい方向性にも触れ,これらの数理的枠組みが Solvency II や我が国の「経済価値ベースのソルベンシー規制」に代表される保険規制下のリスク評価の基盤をなすことを指摘しつつ,破産理論の「その先」を展望する.