スポーツ社会学研究
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原著論文
日本のダンス教育の変遷と中学校における男女必修化の課題
中村 恭子
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2013 年 21 巻 1 号 p. 37-51

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抄録

 日本の中学校におけるダンス教育は、1881年に始まって以来100年余りの間、女子の体育種目として実施されてきた。男女共同参画社会の流れを受けて、1989年にはダンスは男女ともに選択履修できるように改訂された。しかし、長い間女子のみの種目として扱われてきたために、男子の履修はなかなか進まなかった。そして、2008年の学習指導要領の改訂では、中学校1・2年生において、男女ともにダンスを必修で履修することが示された。一方、戦後の1947年には、ダンスの内容は既成作品や基本ステップ等の踊り方の習得学習から“創作ダンス”による創造的学習に転換した。1998年には、新たに“現代的なリズムのダンス”が創造的学習内容として取り入れられた。しかし、それはしばしば誤って、あるいは意図的に、既成の踊り方習得学習として扱われていた。
 そこで、この度のダンス男女必修化を受けて、2008年の改訂から2012年の完全実施までの移行期間におけるダンス教育の変容を明らかにするとともに、今後の課題を明らかにすることを目的として中学校のダンス授業計画について縦断的に調査した。
 その結果、以下のことが明らかになった。2012年には、ほぼ全ての学校でダンスが男女必修で行われるようになっていた。ダンスの授業数が倍増し、女性教員だけでなく男性教員もダンスの指導を担当するようになった。70%のクラスが男女別習で計画され、70%の男子クラスは男性教員が担当していた。しかし、多くの男性教員はダンスの実技経験も指導経験もなかったため、非常に困惑し、ダンスの授業は混乱した。生徒が興味を持っているという理由から、70%以上のクラスで“現代的なリズムのダンス”が採択されていた。しかし、その学習内容についてしばしば誤った解釈がなされており、授業の質の低下が危惧された。
 以上の結果から、教員の指導力養成と“現代的なリズムのダンス”の教材研究が課題であることが示唆された。

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