スポーツ社会学研究
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原著論文
スポーツする少女たちの身体とそのゆくえを「第三波フェミニズム」の立場から考える
田中 東子
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2016 年 24 巻 1 号 p. 51-61

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抄録

 本論では、フェミニズムの理論とスポーツ文化はどのように関わり合っているのか、今日の女性アスリートの表象はどのような意味を示しているのか、1990年代に登場した第三波フェミニズムの諸理論を参照しながら考察している。まず、アメリカにおける女性スポーツ環境の変化に注目し、そのような変化を導いたのがフェミニズム運動の成果であったことを説明する。ところが、スポーツ文化への女性の参画が進むにつれて、徐々に女性アスリートやスポーツをする若い女性のイメージは、商品の購買を促すコマーシャルの「優れた」アイコンに成り下がってしまった。そこで、女性アスリートやスポーツをする若い女性が登場する広告を事例に、女性たちが現在ではコマーシャリズムと商品化の餌食となり、美と健康と消費への欲望を喚起させられていること、そして、今日の女性とスポーツ文化との関係が複雑なものになったことを示す。最後に、複雑な関係になったとはいえ、スポーツ文化は今日においても「密やかなフェミニズム(Stealth feminism)」の現れる重要な現場であるということを、ストリート・スポーツの例を紹介しながら説明する。

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© 2016 日本スポーツ社会学会
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