スポーツ社会学研究
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特集
スポーツとしての暴力
フランスのナイトクラブにおける身体的衝突の象徴的分析
ブレッソン ヨナタン倉島 哲
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2024 年 32 巻 1 号 p. 25-61

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抄録
 ある種の公的な相互行為儀礼は社会秩序の周縁を構成しているが、そこには暴力的とされる行為も含まれている。フランス語には、bagarre(中程度の衝突、闘争)、rixe(激しい衝突、乱闘)など、対面状況での衝突の激しさを区別するさまざまな概念がある。これらの儀礼的な段階の先にあるのは、相手を完全に肉体的に破壊することだけを目的とする段階である。こうした枠組みのもとで、パンチ・平手打ち・頭突きはそれぞれ鮮烈なイメージを喚起する。これらは西洋の暴力の文化の本質的な側面である。フランス西部の街における用心棒としてのエスノグラフィーによって、衝突の実態にアプローチすることができた。打撃を伴う78の事例を観察することで、これらの攻撃の象徴的な意味が明らかになった。武術的な有効性を追求する攻撃が存在する一方で、社会的な勝利を追求する攻撃も存在し、後者は勇気と献身を身体で示すことで達成されるため、しばしば武術的な有効性から遠ざかるのである。後者の攻撃を分析することで、その社会的側面が明らかになる。これらの攻撃が本質的に儀礼的であり、身体的損傷のリスクを制限する機能を持つ構造化された相互行為であり、しかも、勝敗を決定する社会的裁定を反映した行動規範を示しているならば、そこにはスポーツに近い儀礼的な構造を認めることができるのではないだろうか。
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