スポーツ社会学研究
Online ISSN : 2185-8691
Print ISSN : 0919-2751
ISSN-L : 0919-2751
途上国に押し寄せるスポーツのグローバリゼーションの実相
メラネシア地域の事例から
小林 勉
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 9 巻 p. 83-93,136

詳細
抄録

ここでは、グローバル化するスポーツが途上国の人々に与える影響について、メラネシア地域を事例に検討した。スポーツ社会学において近年、スポーツのグローバリゼーションに対する関心が高まっているが、そうした研究の多くは途上国の存在を見過ごしてきた。スポーツ社会学者が、多様化へ向かう現在のスポーツの姿情を強調していくなかで、いったん途上国に目を向けてみると、そこでは異なったグローバリゼーションの実相が展開されていることがわかる。
先進諸国を中心に「楽しさ」を主眼においたニュー・スポーツや市場経済を基盤としたレジャー活動が台頭しているのに対し、ヴァヌアツ共和国のような小さな島嶼国では、IOCやIFを中核とした組織化へ向かう動きが、いまだ活発に展開されている。
このように、グローバル化するスポーツといえども様々な位相があり、そこには一義的には語ってならない異質な層が重なり合っている。本稿においては、スポーツにおけるグローバリゼーションを包括的な言説で一括りにしてしまうのではなく、様々な論理が絡み合う空間に身を置きながら、その交錯関係から出発して考えていくことの重要性を指摘し、そうしたエスノグラフィックな調査の積み重ねが、今後スポーツのグローバリゼーションについて考えていく際に重要であることを示唆した。

著者関連情報
© 日本スポーツ社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top