日本血栓止血学会誌
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症 例
血友病A症例に自然発症した非外傷性小腸壁内血腫の1例
—内外文献症例のレビューを加えて—
萩原  剛守谷 研二西田 恭治佐藤  晋小柳 泰久海老原 善郎新井 盛夫福武 勝幸
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2002 年 13 巻 1 号 p. 55-61

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抄録

症例は38歳の血友病A. 腹痛と嘔吐を主訴に来院. 右側腹部圧痛, 腹膜刺激症状を認めた. 腹部単純X線撮影で小腸拡張像を, 腹部CT撮影で小腸壁の著明な全周性肥厚像を認めた. 第VIII因子補充にも関わらず症状は増強したため, 絞扼性イレウスを疑い, 遺伝子組換え第VIII因子製剤の持続投与下で緊急開腹手術を施行した. 小腸は著しく拡張し, 10cmにわたり全周性境界明瞭に暗赤色を呈し, 同部位の腸間膜も扇状に変色していた. 病変部の腸管15cmおよび腸間膜を切除し, 端々吻合により再建した. 良好な術後経過で退院した. 病理所見では小腸粘膜下から筋層にかけて広がるびまん性出血が認められ, 小腸壁内血腫と診断した. 血友病に発症した非外傷性消化管壁内血腫は, 1950年以降の文献検索で34症例の報告があった. 小腸での発生が17例と多く, しばしばイレウス症状を呈する. 凝固因子補充による保存的治療で改善する例もみられるが, 急性腹症の場合には開腹手術を施行している例も多い. 消化管壁内血腫は血友病患者の腹痛の鑑別疾患として念頭に置いておくことが重要である.

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© 2002 日本血栓止血学会
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