日本血栓止血学会誌
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特集 細胞クロストーク:血管と臓器・組織制御
TGF-βシグナルからみた血管制御の均衡と破綻
福原 武志渡部 徹郎
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キーワード: TGF-β, fibrosis, cancer, EMT, EndMT
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2014 年 25 巻 5 号 p. 609-614

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抄録
要約:血管は,全身に分布して生体機能を維持するための酸素や養分を供給する役割を果たすだけでなく,老廃物を廃棄する働きもしており,結果として動的均衡を保ちつつ生体恒常性を維持させている.全ての血管の基本構造として,内腔を敷石状に単層からなる血管内皮細胞に覆われており,また外側は血管構造の維持や収縮•弛緩をつかさどる壁細胞により被覆されていることが知られている.体内には血管系とは別にリンパ管が存在し,そこにはリンパ管内皮細胞が,血管内皮細胞と同様に単層で内腔を被覆している.血管とリンパ管はいずれも体液の動的恒常性を担う二大脈管系であるので,この動的均衡が様々な理由により破綻すると,代表的には動脈硬化や脳梗塞,あるいはリンパ浮腫といった疾患を引き起こすこととなる.とくに血管恒常性の破綻に伴う疾患は分子実態が解明されつつある.本稿では,血管動態を制御するシグナル伝達のうち,transforming growth facto(r TGF)-βファミリーシグナルとその関連シグナルに焦点を当てて概説する.また腫瘍や線維化の過程に関与するTGF-βシグナルを標的とした分子標的薬の事例とその臨床試験の結果についても解説してみたい.
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© 2014 日本血栓止血学会
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