日本血栓止血学会誌
Online ISSN : 1880-8808
Print ISSN : 0915-7441
ISSN-L : 0915-7441
特集 老化と血栓症
腎の老化のバイオマーカー
佐藤 稔
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 26 巻 3 号 p. 276-283

詳細
抄録

要約:加齢変化と病的変化の病理学的区別は必ずしも容易ではない.すなわち,病的腎障害と老化による腎組織変化には共通した病理組織学的変化が認められ,腎障害には共通した進行過程が存在する.したがって,腎老化のバイオマーカーは,腎障害マーカーで代用できる.糸球体濾過機能のバイオマーカーとしては,古くから用いられている血清クレアチニンや,新規の糸球体障害マーカーのシスタチンC,さらに全身の血管内皮機能を反映すると考えられるアルブミン尿などが上げられる.尿細管障害のバイオマーカーとしては,尿中β2 ミクログロブリン,尿中肝型脂肪酸結合蛋白が有用である.また,腎の老化には酸化ストレスが大きく関与しており,8-ヒドロキシデオキシグアノシンや終末糖化産物などの酸化ストレスマーカーも有用であろう.最近では炎症性老化や腎性老化といわれるあらたな老化の概念も提唱されている.腎老化の早期発見のためには,現在ある腎障害のマーカーを組み合わせて定期的に検査することが望ましい.

著者関連情報
© 2015 日本血栓止血学会
前の記事 次の記事
feedback
Top