抄録
要約:後天性血友病A 症例の治療の現状と長期予後を検討し,必要な治療内容を知ることを目的に当院の症例を解析した.患者は男性8 例,女性2 例,平均71 歳.全例で免疫抑制療法,9 例で止血療法が施行された.APTT 正常化までの期間,インヒビター消失までの期間,全治療期間,入院期間の各中央値は42,61,96,62(日)であった.1 例が治療中に出血死亡,9 例はインヒビターが陰性化した.生存者のうちPS の悪化は2 例,不変は7 例でうち2 例のみがPS 0 を維持した.インヒビター陰性化症例の最終転帰は3 例が死亡,4 例が他院転院,2 例が外来通院中であった.他院転院は3 例がPS 3 以上であった.死亡例は全例治療終了後3 カ月以内に死亡した.重篤な基礎疾患を併発した高齢患者では,社会復帰症例が少なかった.患者や基礎疾患の十分な評価による治療計画を立て,長期予後もしくは治療ゴールを見据えた総合的治療が重要と思われる.