日本血栓止血学会誌
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27 巻 , 1 号
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特集1 血小板と悪性腫瘍
  • 井上 克枝
    2016 年 27 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
    要約:癌の進展は,1)原発巣から離脱,2)血管に浸潤,3)血流に運ばれ,4)遠隔臓器の毛細血管壁に粘着して,5)血管外に遊出し,6)転移先で増殖する,という段階を踏むが,血小板はほとんどの段階に関与して転移を促進する.癌細胞が血小板を活性化すると,放出された顆粒内容により上皮間葉転換が生じて原発巣からの離脱が促進される.血中に入り,血小板が癌細胞に粘着すると,流血中のシェアストレスや免疫担当細胞の攻撃から守られ,転移の足場を提供される.転移先では,血小板から放出された増殖因子や血管新生により,腫瘍血管新生と増殖が促進される.すべては血小板が癌細胞により活性化されて粘着するところから始まる.その機序としては,癌細胞表面の膜蛋白ポドプラニンが血小板CLEC-2 と結合して血小板を活性化したり,活性化血小板に表出するP セレクチンが癌細胞上のムチンと結合するといった機序が知られている.本稿では,血小板が癌の進展を,上記各段階において促進する機序を概説する.
  • 竹本 愛, 藤田 直也
    2016 年 27 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
    要約:血小板は止血において主要な役割を果たすが,一方でがんに対して促進的な効果が報告されている.とくに,がん細胞が血行性に転移する際,血小板はがん細胞表面を覆うことにより免疫細胞による攻撃からの回避に関与するとともに,血小板凝集を起点とした大きな腫瘍塊の形成は,転移先の毛細血管における塞栓形成を助長する.さらに,血小板は凝集の際,増殖因子やサイトカインを放出するため,がん細胞の増殖,転移能の亢進,転移初期のニッチ形成にも関与することが示唆されている.したがって,血小板を標的とした治療,とくに血小板とがん細胞の相互作用を抑制する方法は新規のがん転移治療薬の開発に繋がる可能性がある.本稿では,血小板とがんの関係,血小板凝集を介したがん転移促進機構,転移性がん細胞―血小板間相互作用を担う因子について概説するとともに,筆者らのグループが転移の治療薬の開発を目指して取り組んでいる血小板とがんの相互作用を標的とした転移抑制の研究の現状についても紹介する.
  • 野川 茂
    2016 年 27 巻 1 号 p. 18-28
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
    要約:トルーソー症候群は「悪性腫瘍に合併する凝固能亢進状態とそれに伴う遊走性血栓性静脈炎」をさすが,脳梗塞の発症を機に初めて悪性腫瘍が発見されることも少なくない.このため,本邦では「悪性腫瘍に合併するDIC に伴う血栓症および非細菌性血栓性心内膜炎(NBTE)に起因する全身性(とくに脳)塞栓症」として理解されつつある.原因となる悪性腫瘍は,白血病を除けば,肺癌,膵癌,胃癌,卵巣癌(ムチン産生腫瘍)などの腺癌が圧倒的に多い.頭部MRI では多発性塞栓症を呈することが多く,約半数にNBTE が認められるが,経胸壁心エコーでの検出率は低く,経食道心エコーが診断に有用である.また,CA125 やCA19-9 などの高分子ムチンが,腫瘍マーカーあるいは塞栓形成物質として注目されている.治療では,ワルファリンの効果は不確実とされ,出血がコントロールされていれば,未分画ヘパリン静注やヘパリンカルシウム皮下注が用いられる.
  • 宮本 真吾, 石川 秀樹, 若林 敬二, 酒井 敏行, 武藤 倫弘
    2016 年 27 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
    要約:症例対照研究やコホート研究ではアスピリンの常用者は大腸がんの発生頻度が低いことが多数報告されている.ランダム化比較試験においても,アスピリンは大腸がんの前がん病変である腺腫の発生を予防することがメタ解析レベルで示されている.大腸がんに関しては,これまで明らかではなかったが,アスピリン介入試験の終了後,長期間追跡すると大腸がんの発生を抑制することが示された.以上は欧米のデータであるが,日本でもアスピリンを用いた大腸がん予防を目的とした2 つの二重盲検無作為割付試験が報告されており,現在ではアスピリンの実用化に向け,最適化に関する大規模試験が行われている.本稿では,アスピリンの大腸がん予防介入試験の現状を紹介するとともに,アスピリンの標的として可能性のある血小板と大腸がんとの関連性について考察する.
特集2 NETs の臨床における意義
  • 濱口 重人, 朝野 和典
    2016 年 27 巻 1 号 p. 34-41
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
    要約:好中球のneutrophil extracellular trap(s NETs)は,2004 年に,LPS やサイトカインなどの刺激に応じて,自己の核内のDNA を能動的に周辺に網目のように拡散し,細菌やウイルスなどの病原微生物をトラップすると同時に,DNA に付着する抗菌蛋白やヒストンで殺菌的に処理することで感染防御に働く自然免疫の新しい機構として発見された.その後の研究の進展によって,局所の感染症のみならず血栓形成やDIC との関連や,自己免疫疾患との関連など,当初の予想をはるかに超えた多彩な作用を持ち,種々の疾患の進展に関与していることが明らかになってきている.現在これまでの断片的な病態の理解をある程度集約化できる概念として登場してきており,NETs 研究の動向は新たなステージを迎えていると言える.
  • 石津 明洋
    2016 年 27 巻 1 号 p. 42-48
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
    要約:感染刺激を受けた好中球は活性化され,やがて細胞死に至る.その際,好中球はDNA と細胞質内タンパクを混合し,これを細胞外に網状に放出する.これが好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps: NETs)である.NETs は感染防御において重要な役割を果たしているものの,細胞外に放出されたミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase: MPO)などの細胞質内タンパクは自身を障害する恐れもあるため,生体内におけるNETs の形成は厳密に制御されている.しかしながら,何らかの原因でNETs が適切に除去されない状況では,MPO に対するトレランスの破綻が誘導され,血管炎惹起性自己抗体であるMPO-ANCA が産生される.また,産生されたMPO-ANCAにはNETs 誘導活性があるため,MPO-ANCA 関連血管炎ではNETs とANCAを介した悪循環が形成されている.NETs はANCA 関連血管炎の病因ならびに病態形成に重要な役割を果たしている.
総説
  • 戸澤 圭一, 松原 由美子
    2016 年 27 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
    要約:アナグレライドは,本態性血小板血症(essential thrombocythemia: ET)の治療薬として米国で1997 年に,欧州で2004 年に,日本で2014 年に発売された.アナグレライドは当初,血小板凝集阻害機能に着目され開発が進められたが,血小板凝集阻害機能を起こすより低い用量では,血小板数減少をもたらすことが発見され,以後は血小板減少効果に焦点を当てられるようになった.ET 患者のアナグレライドによる治療開始前・開始後の巨核球のプロファイルを解析した研究結果から,アナグレライドの血小板減少効果は巨核球の過増殖および過分化を抑制することによりもたらされることが示された.作用機序の解明に関しては,転写関連因子に着目した研究が報告されているが,この機序については未だ不明な点が多い.
原著
  • 松尾 汎, 孟 真, 小川 智弘, 山田 典一, 古出 隆士, 鈴木 健夫, 皿井 伸明
    2016 年 27 巻 1 号 p. 54-63
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
    要約:安静期間4 日以上,年齢60 歳以上で,慢性閉塞性肺疾患の急性増悪,感染症または炎症性疾患で入院し,静脈血栓塞栓症(VTE)予防ガイドラインで示されたリスクの組み合わせより高リスクと判断された入院患者の深部静脈血栓症(DVT)発現頻度を前向きに超音波検査で調査した.安静の3 カ月前以降に手術または外傷があった患者,入院時にVTE と診断されていた患者,抗凝固薬を使用していた患者は除外した.4 施設より25 名の患者が登録され,平均年齢は83.1(標準偏差6.8)歳であった.理学的予防法が行われていた患者はなく,抗血小板薬を使用していた患者は5 名であった.25 名中8 名(32.0%)にDVT(全て無症候性,新しい血栓は6 例,中枢型は3 例)が認められた.急性内科疾患入院患者には無症候性DVT が潜んでいることが示唆された.今後,より多くの患者を対象とした前向き研究でさらに検討すべきと考えた.
  • 関 義信, 宮腰 淑子
    2016 年 27 巻 1 号 p. 64-69
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
    要約:後天性血友病A 症例の治療の現状と長期予後を検討し,必要な治療内容を知ることを目的に当院の症例を解析した.患者は男性8 例,女性2 例,平均71 歳.全例で免疫抑制療法,9 例で止血療法が施行された.APTT 正常化までの期間,インヒビター消失までの期間,全治療期間,入院期間の各中央値は42,61,96,62(日)であった.1 例が治療中に出血死亡,9 例はインヒビターが陰性化した.生存者のうちPS の悪化は2 例,不変は7 例でうち2 例のみがPS 0 を維持した.インヒビター陰性化症例の最終転帰は3 例が死亡,4 例が他院転院,2 例が外来通院中であった.他院転院は3 例がPS 3 以上であった.死亡例は全例治療終了後3 カ月以内に死亡した.重篤な基礎疾患を併発した高齢患者では,社会復帰症例が少なかった.患者や基礎疾患の十分な評価による治療計画を立て,長期予後もしくは治療ゴールを見据えた総合的治療が重要と思われる.
  • 市川 順子, 鮫島 由利子, 市村 健人, 小高 光晴, 西山 圭子, 小森 万希子
    2016 年 27 巻 1 号 p. 70-76
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/26
    ジャーナル フリー
    要約:トロンボモジュリン(TM)は理論上,相反する線溶・抗線溶作用をもつ.そこで,TM の線溶に対する作用をトロンボエラストメトリー(ROTEM)を用いてトラネキサム酸(TA)と比較検討した.2 nM の組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)添加によりROTEM 上,45,60 分後の線溶係数(LI45,LI60)が有意に低下,凝固時間,最大溶解度(ML)が有意に増加する線溶亢進状態を反映した系を用いて検討した.TA(0.033,0.165,0.33 mg/mL)は,tPA 添加によるLI45,LI60,ML の変化を有意に抑制した.一方,TM(0.3,1,3 μg/mL)は,tPA 添加によるLI45 の低下を有意に抑制したが,LI60 低下およびML 増加に対する有意な差を認めなかった.以上より,TM は線溶亢進状態の血餅溶解時間を延長させたが,TA に比較してその作用は弱かった.
凝固・線溶・血小板タンパク質の機能発現機構
ノックアウトマウスシリーズ
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