日本血栓止血学会誌
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原著
トロンボモジュリンの組織プラスミノゲン活性化因子による線溶亢進に対する調節作用
市川 順子鮫島 由利子市村 健人小高 光晴西山 圭子小森 万希子
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2016 年 27 巻 1 号 p. 70-76

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抄録

要約:トロンボモジュリン(TM)は理論上,相反する線溶・抗線溶作用をもつ.そこで,TM の線溶に対する作用をトロンボエラストメトリー(ROTEM)を用いてトラネキサム酸(TA)と比較検討した.2 nM の組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)添加によりROTEM 上,45,60 分後の線溶係数(LI45,LI60)が有意に低下,凝固時間,最大溶解度(ML)が有意に増加する線溶亢進状態を反映した系を用いて検討した.TA(0.033,0.165,0.33 mg/mL)は,tPA 添加によるLI45,LI60,ML の変化を有意に抑制した.一方,TM(0.3,1,3 μg/mL)は,tPA 添加によるLI45 の低下を有意に抑制したが,LI60 低下およびML 増加に対する有意な差を認めなかった.以上より,TM は線溶亢進状態の血餅溶解時間を延長させたが,TA に比較してその作用は弱かった.

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© 2016 日本血栓止血学会
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