2018 年 29 巻 3 号 p. 243-250
要約:自己免疫疾患の多くでは,病原性を有する自己抗体が病態を直接誘導する.私たちはこれまでGPIIb/IIIa,β2 グリコプロテインI を認識するCD4+T細胞の詳細な解析を行い,これら自己反応性T 細胞は通常のプロセッシングで生成されない自己抗原由来の潜在性ペプチドを認識することを明らかにした.また,患者のみならず健常人の多くのT 細胞レパトワに自己反応性T細胞が存在するが,活性化フェノタイプは患者でのみ検出された.この事実は自己抗体産生が自己反応性CD4+T 細胞の存在により規定されるのではなく,その活性化を誘導する自己抗体由来の潜在性ペプチドの提示により規定されることを示す.したがって,何らかの環境要因により自己抗原の潜在性ペプチドが抗原提示細胞により提示され,さらに遺伝的素因,制御性T 細胞など免疫調節機構の破綻が加わることで自己免疫応答が誘導される.