2018 年 29 巻 3 号 p. 251-261
要約:わが国では,自己免疫性凝固因子欠乏症の診断症例数が増加する傾向にある.自己抗体は,中和抗体(いわゆるインヒビター)か非中和抗体(主に除去亢進)あるいは両者の混合型であり,凝固活性阻害や凝固因子著減の結果,出血に至る.自己抗体が生じる原因は不明であるが,自己免疫疾患,悪性腫瘍などの基礎疾患を伴う症例が半数であり,免疫寛容/制御機構の破綻が推定される.残りの半数は特発性であり,高齢者に多いので加齢も危険因子であろう.出血重症度は,標的の凝固因子,症例によって,無症状から出血死までと大きく異なる.各凝固因子を補充するのが止血療法の原則であるが,バイパス製剤が有効な疾患もある.抗体根絶療法として免疫抑制薬を投与するが,慢性化,寛解後再燃する症例も多く,最適の方法は未確立である.厚労省研究班による調査活動の結果,4 種類の自己免疫性凝固因子欠乏症が指定難病288 として公的医療費助成の対象疾患となっている.