2018 年 29 巻 4 号 p. 343-347
要約:2017 年に日本整形外科学会の症候性VTE 予防ガイドラインが発刊された.それまでのガイドラインでは,予防対象は「無症候性VTE を含む全てのVTE」であったが,新ガイドラインでは予防対象を「症候性VTE」に変更した.これは患者にとって重要な結果は無症候性VTE の減少ではなく,症候性VTE・致死性PTE と出血合併症であるという国際的ガイドラインの動向にも沿ったものである.予防対象を変更したことで,エビデンスが乏しくなりエビデンスレベルを併記した推奨はできなかった.また,これまでのわかりやすいリスク分類や予防法の表を排除した.これは一覧表が医療訴訟に安易に使用されてきたことを鑑みたものである.医療安全を意識した執筆を心がけ,基本的で安全性が高い理学的予防法,早期歩行を重視.抗凝固療法を適応する場合は,患者の個別的状況に応じて,VTE リスクと出血リスクとのバランスを考慮する必要があることを強調している.