日本血栓止血学会誌
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特集 静脈血栓塞栓症の予防の現状と今後の課題
静脈血栓塞栓症の臨床研究とデータベース研究における統計学の役割
小椋 透
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2018 年 29 巻 4 号 p. 374-378

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抄録

要約:静脈血栓塞栓症の発症割合は状況や部位によっては数%である.日本で静脈血栓塞栓症を評価項目とした並行群間比較試験は実施されているが,両群ともに静脈血栓塞栓症の発症が少なく,群間で有意差が認められないことがある.発症割合が数%の場合に,試験群は対照群に比べて発症が有意に減ることを示すためには多くの症例数が必要で実現可能性が乏しくなる.そこで,多くの症例数による研究を行うために,データベースや海外データが利用されている.データベースを用いた研究として,データベース内で群を作り群間比較する方法はあるが,群間で被験者背景等が不揃いの可能性がある.その場合に,部分集団やマッチング等で群間の被験者背景等を揃えて比較する方法がある.海外データは日本人と同様の特徴であるとは限らないため,日本データと併せて使用するためには,併せることの妥当性等の検証が必要となる.以上に関した研究を統計学の観点から検討する.

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© 2018 日本血栓止血学会
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