2021 年 32 巻 3 号 p. 284-288
我々はアンジオテンシンIIを標的とした高血圧ワクチンおよびS100A9をターゲットにした抗血栓ワクチンの開発に取り組んできた.いずれも内因性のタンパク質に対する有害な自己免疫反応を回避でき,高血圧ワクチンについては持続的な降圧作用や脳梗塞における脳保護効果が齧歯類で認められ,現在臨床試験に進んでいる.抗血栓ワクチンではクロピドグレルと同程度の効果が長期に持続しつつも出血時間の延長を認めないことがマウスで確認できており,サルでの検討に取り組んでいる.長期にわたる出血傾向などの合併症回避,脳梗塞急性期における既存の抗血栓薬との併用の可否などの検討がさらに必要であるが,服薬アドヒアランスの向上が必要とされている脳梗塞後の二次予防において長期間の効果が見込めるワクチンは,既存の抗血栓薬や降圧剤にかわる新しい治療戦略となる可能性がある.