日本血栓止血学会誌
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特集:DIC Up To Date
ビッグデータから見た本邦のDIC診療
久宗 遼山川 一馬
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2022 年 33 巻 5 号 p. 563-571

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抄録

近年,海外からの臨床ビッグデータを用いた記述疫学研究や比較研究が多く報告されるようになった.本邦でもDPC(Diagnosis Procedure Combination)データやレセプトデータが電子媒体で保存されるようになったことで,近年になり様々な分野で報告され始めた.本稿ではビッグデータとして症例数の多い保険データベースであるDPCデータを用いた播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation: DIC)に関する臨床研究に焦点し,その流れと今後の展望を論じた.DIC疫学研究ではDIC病態の周知や治療法の検討により,DICの死亡率は各基礎疾患において改善傾向が示された.各基礎疾患で治療薬の投与割合が異なっていたが,antithrombin製剤,recombinant thrombomodulin製剤の使用割合が多い傾向であった.各投与薬剤の比較研究ではいくつかの基礎疾患において死亡率の改善が認められた.DPC解析データのようなビッグデータを用いた大規模観察研究は質が高ければ,RCTに匹敵する臨床的価値を示す.今後はDIC領域において本邦からのさらなるビッグデータ解析による国際的発信が望まれる.

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© 2022 日本血栓止血学会
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