日本血栓止血学会誌
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特集:DIC Up To Date
造血器腫瘍(主に白血病)に合併するDICの病態と治療戦略について
河野 徳明
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2022 年 33 巻 5 号 p. 551-562

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抄録

播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation: DIC)は,主に敗血症や造血器疾患に合併する.代表的な敗血症に合併するDICの病態は,免疫細胞から放出されるヒストンやHMGB-1(High mobility group box-1 protein)などの核内蛋白が重要性な役割を果たし,線溶抑制型で臓器不全を呈する.一方,造血器腫瘍(主に白血病)に合併するDICは,線溶亢進型で主に出血症状を呈する.白血病細胞は,組織因子やcancer procoagulantを発現・放出し,外因系凝固機序を促進させ,凝固活性化する.特に,急性前骨髄性白血病細胞ではannexin IIの過剰発現により,プラスミンの生成を亢進し,線溶活性化する.DICの診断は,鑑別疾患の除外[血栓性微小血管障害症(thrombotic microangiopathy: TMAなど)]を行い,診断基準(旧厚労省 もしくは,日本血栓止血学会)に沿って行う.造血器腫瘍に合併するDICの治療では,遺伝子組み換えトロンボモジュリン製剤とAT製剤の有効性と安全性が示されている.最近,HMGB-1が,造血器腫瘍に合併するDICの病態に関与する可能性が示されている.また,残された課題であるDICに合併する脳出血についても文献的考察を行う.

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© 2022 日本血栓止血学会
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