日本血栓止血学会誌
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ラット敗血症DICモデルにおけるAll-trans retinoic acid (ATRA) の抗凝固効果および臓器障害と致死率の改善
青島 敬二朝倉 英策山崎 雅英市野 典斉藤 正典熊走 一郎森下 英理子御館 靖雄水谷 朋恵松田 保
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1999 年 10 巻 1 号 p. 72-78

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抄録
All-trans retinoic acid (ATRA) は Acute promyelocytic leukemia (APL) に合併した Disseminated intravascular coagulation (DIC) を改善することが知られている. また in vitro において, ATRAはAPL細胞や血管内皮細胞の Thrombomodulin (TM) の発現を高め Tissue factor の発現を抑制するという報告がある. そこで, ラット敗血症DICモデルに対してATRAを投与し, 凝血学的マーカーの変動と臓器障害, 腎糸球体におけるフィブリン血栓形成およびTM発現への影響について検討したので報告する. 敗血症DICモデルは雄性ラットにLPS (30mg/kg/4hr) を持続点滴して作成した. ATRA投与群ではATRA (20mg/日) をLPS投与1週間前から連日経口投与した後にLPSを投与した. LPS投与により生じた血中フィブリノゲン濃度の減少, D-dimer, Thrombin-antithrombin III complex の増加, 臓器障害は, ATRA前投与により有意に改善された. ATRA+LPS投与群では, 腎臓でのフィブリン血栓の形成も有意に抑制され, 腎糸球体でのTMの発現はLPS単独投与群よりも増加していた. ATRA投与により, LPS投与2日後まで, 凝血学的マーカー, 臓器障害, フィブリン血栓形成は有意に抑制され, LPS投与後の生存率も改善した. 以上より, ATRAは本モデルにおいて有効であり, DICによる生存率も改善するものと考えられた.
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