獣医臨床皮膚科
Online ISSN : 1881-2236
Print ISSN : 1347-6416
ISSN-L : 1347-6416
短報
犬の表層性壊死性皮膚炎の皮膚と肝臓の病理学的変化
八島 加奈子柴田 久美子青山 利雄永田 雅彦代田 欣二
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 12 巻 1 号 p. 17-21

詳細
抄録
犬の表層性壊死性皮膚炎(SND)は肝障害における栄養素の欠乏に起因すると考えられている。しかし,肝臓の病変は症例によって様々である。したがって,随伴する肝病変の性格づけはSNDの病理発生を解明する上で助けになるであろう。本論文で3例の犬SNDにおける肝臓病変について報告する。症例1はポメラニアン,雌,成犬で,肝臓肉眼所見はび慢性小結節状であった。組織学的に線維化はなく,実質の虚脱と再生を伴う多病巣状の肝細胞の水腫/グリコーゲン変性が見られ,この為,肝臓は結節状となっていた。診断としては肝臓の空胞ないしグリコーゲン変性症とした。症例2はマルチーズ,避妊雌,11歳で,肝臓は肉眼的に症例1と同様に小結節状であった。組織学的に肝細胞の空胞/脂肪変性および水腫/グリコーゲン変性が見られ,中程度の線維化と重度へモジデローシスを伴っていた。症例3は雑種,去勢雄,16歳で,肝臓は肝細胞癌と診断された。3症例全てにおいて糜爛,潰瘍,痂皮など,SNDに特徴的な皮膚肉眼所見がみられ,皮膚生検の組織像はSNDのそれと一致した。全ての症例で肉球の変化が最も重度であった。低アルブミン血症が症例1および2で見られた。グルカゴンの上昇は見られなかった。症例1,2の肝臓病変は同じ肝疾患のものと考えられた。症例3は肝細胞癌に随伴したSNDの最初の報告例と思われた。
著者関連情報
© 2006 日本獣医皮膚科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top