抄録
ジャーマン・シェパードの腰部背側,および日本猫の頭部皮膚に認められた腫瘤を,それぞれ外科的に摘出した。病理組織学的検査では,いずれの腫瘤とも著しく拡張した毛包様の嚢胞から成り,嚢胞壁には好塩基性小型の腫瘍細胞の増殖を認め,また嚢胞内腔には陰影細胞を認めたことから毛包上皮腫と診断した。続いて単一の病理組織検査機関における,犬と猫の毛包上皮腫の発生頻度を腫瘍検査依頼件数から算出した。その結果,全ての腫瘍検体数に対する毛包上皮腫の発生頻度は犬で3.26%であったのに対し,猫ではわずか0.36%であった。自験例は猫に発生した毛包上皮腫に関する本邦で最初の報告例であり,猫における本腫瘍の報告が少ないのは,犬に比べて発生率が低いためであると考えられた。