獣医臨床皮膚科
Online ISSN : 1881-2236
Print ISSN : 1347-6416
ISSN-L : 1347-6416
症例報告
腋窩リンパ節に転移を認めたイヌの乳腺複合癌の1例
橋本 健二郎川畑 敦大室 農夫代田 欣二
著者情報
キーワード: イヌ, 乳腺腫瘍, 複合癌
ジャーナル フリー

2009 年 15 巻 1 号 p. 33-37

詳細
抄録

10歳齢,雌のラブラドール・レトリバーの右側乳腺第三乳頭下に,境界明瞭な腫瘤が認められた。組織学的に腫瘍は小葉に区画され,各葉は腺腔形成性に増殖する上皮性腫瘍細胞とその周囲に充実性に増殖する筋上皮性腫瘍細胞から構成されていた。腫瘍細胞には核異型や核分裂像はほとんど認められず,脈管内への浸潤を示唆する所見も得られなかったが,同時に切除された腋窩リンパ節の辺縁洞には多発性に転移巣が認められ,乳腺複合癌と診断した。本症例では,原発巣のHE染色標本の観察のみでは良性腫瘍である複合腺腫との鑑別が困難であったことから,本例を含む3例の乳腺複合癌と9例の乳腺複合腺腫について免疫組織学的にproliferating cell nuclear antigen(PCNA)の発現について比較したところ,複合癌において腫瘍細胞のPCNA陽性率が有意に高かった。以上結果より,乳腺腫瘍の病理検査における付属リンパ節の評価の重要性が再確認され,PCNA発現の評価が犬の複合型の乳腺腫瘍の良・悪性の鑑別の指標の一つになることが示唆された。

著者関連情報
© 2009 日本獣医皮膚科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top